研究課題/領域番号 |
22520332
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
岩井 憲幸 明治大学, 文学部, 教授 (60193710)
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研究分担者 |
服部 文昭 京都大学, 大学院・人間環境学研究科(研究院), 教授 (80228494)
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キーワード | 古代ロシア文語 / 古代教会スラブ語 / ブルガリア写本 |
研究概要 |
岩井の許においては、「オストロミール福音書」(Ostr)のテクスト111葉から電子化を続行し、一次的作業を終えて紙に印刷し、Ostrのファクシミリ版との対校作業を208葉迄終了した。又、「サバの本」(Sav)のテクストについては一次的作業を終えて紙に印刷し、Knjazevskajaらの刊本テクストおよび写真との校正を終了した。今後は誤植・変更箇所を電子テクストに反映する作業に入る。岩井はSavと他のOCSテクストの文献学的研究を当初の課題としていたが、「ヴァチカン・パリンプセスト・キリル・アプラコス」(VP)とSavおよびOstrとの関係性を重視し、前年の研究を踏まえてVPのsynaxarionにつきOstrと比較しつつ精査・検討を行ない、次の結果を得た。1)VPの底本はグラゴル文字で書かれた複数のaprakosである可能性あり。2)VPのsynaxarionはその構成上、スラブでのaprakos編集史上、創草期に位置すると考えうる。3)VPに元来存在しなかった項目が存する。4)VPインキピット(Inc)、に特異な例が存する。5)工ncに関し、VPはタイプIが主であるのに対し、OstrはタイプIからIaにドミナントが移行する。6)工ncとペリコペーとの間に、この間をつなぐテクストが挿入されるケースがみられる。7)VP同様、Ostrにも数字表記に関し、グラゴル・キリル両文字の誤認・混同が存する。これらは祖本に辿る可能がある。 服部は、これ迄の研究を踏まえて、11世紀~12世紀頃のルーシの言語における過去時制に関し、「アルハンゲリスク福音書」(Arch)に見られる興味深い諸例を手掛かりとして、《文法化》という視点から考察を加え、当時の非標準語である日用語(zhivajarech')の姿に追った。その成果は別項に示した国際シンポジウム(2011.11.13,北海道大学)において講演発表された。なお、2010年の服部の研究と今回の岩井の研究により、ロシアにおける拡張型aprakosの成立・発達に関するZhukovskajaの主張は、VPの存在とその構成から、再考されなければならないことが明確化した。これは大きな収穫である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「オストロミール福音書」のファクシミリ版と印刷本において細々とした文字・記号の問題があり、予想外であったが、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
「ヴァチカン・パリンプセスト・キリル・アプラコス」の研究を深化させる必要がある。 さらに「サバの本」につき、今次あまり問題とすることができなかった故、本格的に精査・研究を要する。
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