研究課題
岩井の許において、『サバの書』(Sav)を中心として、『オストロミール福音書』(Ostr)、『アルハンゲリスク福音書』(Arch)、『ムスチスラフ福音書』(Mst)のそれぞれを四福音書での章節順に並べ替えた、平行テクストの作製を開始した。7月にはまずマタイ伝を紙に印刷し(A4版全391ページ)、試作品として種々の検討を行った。年度末までにマルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝についても完成させた。岩井はさらに、(前年度に文献学的な分析の対象とした)Savのsynaxarionの研究に対応させるべく、同書のmenologionについても文献学的な分析と検討を行った。今年度の研究の特徴は、従前のように古代教会スラブ語のカノンであるSav本体のみではなく、やや後のロシアやブルガリアで作られた写本をも包含する「とり合わせ本」として全体で1冊のアプラコスをなすコーデクスNo.14を研究対象とする点にあった。得られた結論は次の4点である。1)Kniazevskaiaらの刊本で列挙されるmenologionに認められる日付に関して漏れや誤りが有ることを確認した。2)前年度のsynaxarionの研究で「ペンテコステ後第17土曜・日曜」は設定されていなかったと結論付けたが、設定されていたと考えうる。3)「主日の早課十一の福音」は『アッセマーニ写本』、Arch、Mstと同様にmenologionの後に配されている。これに対してOstrでは、synaxarionとmenologionの中間に配される。4)コーデクスNo.14では、さらに写本末尾にアポストルの聖務日課とみられるHeb 3.1-4を含む半葉が付加されており、きわめて興味深い(この葉は11世紀ブルガリア制作にかかる)。一方、服部は、Ostr、Arch、Mstのアプラコスとしての構成に注目しつつ、今次の研究の総括を試みた。その結果、三写本の中で成立年代が最も古いOstrが、当時の最新のブルガリアのアプラコスにならうことで、革新的であることを示し、その成果を国際学会において発表した。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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明治大学教養論集
巻: 497 ページ: 1-28
Comparative and Contrastive Studies in Slavic Languages and Literatures. Japanese Contributions to the XVth International Congress of Slavists
巻: - ページ: 1-9