研究概要 |
今年度は研究課題の準備期間として,マルカブリュにかんする資料収集をおこない,本務校の大学院の紀要に執筆した論文において,難解な「椋鳥の歌」2部作についての解釈と校訂を試みた。 この過程でマルカブリュについて,1909年のDejeanneによる校訂のほか,2000年に出版されたGaunt, Harvey, Patersonの3名による校訂,さらにこの作品に特化したものとして,Lucia lazzeriniによる校訂(2000年)のいずれも決定的というにはほど遠いテクストであることが確認できた。もちろん私の提出した校訂と解釈も,この作品のむずかしさを解決できたわけではないが,2部作中の後半19行目の解釈をつうじて,その写本を"sui"と読むか"fui"と読むかで,どれだけこの作品への展望が変わってくるかを示そうと試みた。この作品については,さらに研究を深めたうえで,研究2年目,2011年度(平成23年度)の予定されている国際学会(モンペリエ大学)で発表することにより,各国の研究者の批判をあおぐつもりである。この機会を利用して,マルカブリュという作者についての理解を深められればと期待している。 また今年度は,ガウセルム・ファイディイトにかんしての前回の国際学会(アーヘン大学)の発表がそのactesに掲載されることになったので,さまざまの研究者に指摘された点を再吟味して原稿をアーヘン大学の主催者アンジェリカ・リーガー教授に送った。2010年中に刊行予定であったがまだ発行されていない。
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