福田は、昨年度(22年度)はパリ・ソルボンヌ大学大学院地理学科の修士論文『パリで日本を食す--すしの場合--』(日本に調査に来た著者本人もわたしが指導)の口頭審査に加わるとともに、パリ・ソルボンヌ大学地理学科の教員たちとの研究上の交流を行った。さらにその論文をふまえつつ、ブルデューの社会学とそれによって影響を受けたフランスの飲食社会学の具体的事例への応用として、フランスでの現地調査をふまえ、日本とフランスでのスシの相互変容の過程を分析した。その成果の主要部分は、早稲田大学教育学部紀要『学術研究--複合文化学編--』第59号(2011年2月刊)に論文「飲食にみる文化変容鮨からsushiへ」としてまとめた。 神尾は平成22年度は「複合文化学」のケーススタディとして、「19-20世紀転換期のノイズと他者」という問題に取り組んだ。これに関する多様な文献、とくにドイツの文化学の文献、さらに文化社会学やカルチュラル・スタディーズに関する日本の研究者の文献を批判的読解することを通して、今後「複合文化学」の方法論を体系化するに必要な基礎が得られた。 福田と共同研究者神尾は、こうして得られた知見を、照合し、複合文化学の方法論の構築に向けて、基本的な方向で一致を見た。そのような基本的な方法論について、両者が共同で運営する、早稲田大学教育総合・科学学術院、複合文化学科の複合文化学演習(3・4年合同)で応用し、学生の卒業論文(4年)とゼミ論(3年)において一定の成果がみられた。すべての論文がこれまで以上に質の高いものとなったということである。これらの論文はそれぞれ『複合文化学の冒険』(4年生の卒論)、『複合文化学への助走』(3年生)としてまとめられた。
|