今年度は3年計画のうちの1年目である。本年度は。まず、ロブ=グリエの初期の作品『嫉妬』の舞台となったマルチニーク島の現地調査を行い、作品を読み直す作業から取りかかった。現地調査は平成22年9月1日から12日にかけて行ったが、期間後半のパリでロブ=グリエが居住していた場所の調査については、町の様子が一変していたためあまり大きな成果は上げられなかったが、期間前半のマルチニーク島の調査はロブ=グリエ解釈に重大な変更を迫るきわめて重要な成果をあげることができた。調査を行った結果、『嫉妬』について過去に行われた解釈のうち、テキスト理論的解釈がいかに極端な解釈にすぎないかを実感することかでき、社会学的解釈については、その解釈の極端な部分を排除するとともに妥当で強調すべきエグゾチスムに係わる部分をより深く理解することができ、こうして作品解釈の間合いを計ることが可能になった。また、この成果は『嫉妬』の解釈にとどまらず、ロブ=グリエの初期から中期にかけての多くの作品の解釈に大きな影響を及ぼすものであり、その再解釈の試みは来年度つまり研究計画の2年目に行う予定になっている。本年度の研究成果については、平成22年12月18日に行われた「関西大学フランス語フランス文学会」で口頭発表を行った上、平成23年3月15日発行の当該学会誌『仏語仏文学第37号』に論文として発表した。
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