22年度から進めてきた白氏文集(『白居易集箋校』全6巻、朱金城撰)の閲読を23年4月で終了し、論文の構想、執筆へと作業を進める予定である。その際には、最近の日本での研究を集めた「白居易研究年報」なども参考にしていきたい。 文集を読み進める中で興味を覚えたのは、白居易が六朝の文人の中で、〓康に多く言及していることである。言うまでもなく、〓康は竹林の七賢の領袖の一人で、魏から晋への政治抗争において、司馬氏に抵抗した過激な行動で知られる。白居易はこの勧康をもっぱら自らの「慵(ものうい)」気分・生き様の先達者として捉える。勿論、〓康には「養生論」などの著作もあり、また、神仙思想の信奉者でもあるのだが、白居易が何故〓康に度々言及するのかという点について考察を深め論文を書いてみたい。 白居易の閑適に関わる個人レベルの道教に対する愛好には、荘子思想、特に「逍遙」の思想に対する共感や、金丹への志向などがすぐさま挙げられるであろう。中晩唐では、韓愈や李徳裕と道教との関わりなどについての比較が必要であろう。また、養生思想など宋代の文人達の道教信仰との近似も指摘できるかもしれない。白氏文集には道教に関する多くの情報があるので、中晩唐の道教全体と宋代道教への展開を視野に入れた論文を構想していく事になろう。 「閑適」に関するものとして、他に1.棋、2.鶴、3、逍遙、4.閑適をそれぞれの章とした小論文も構想中で、詩魔に関する事柄も検討する予定である。
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