24年度は、以前から進めてきた白氏文集(『白居易集箋校』全6巻、朱金城撰)の閲読を踏まえ、白居易の道教思想を最近の日本での研究を集めた「白居易研究年報」なども参考にしつつ検討した。実際に文集を読んでみると、白居易と道教との関係は非常に広汎なもので、国家宗教としての道教との関わり、具体的には老子信仰・元始天尊信仰との関わり、儒教、仏教、道教の所謂三教論衡の問題と、個人レベルの道教に対する愛好、彼の「閑適」な生活の友としての道教に対する愛好とは、ひとまず区別して検討する必要があると思えてきた。そうした検討を経て、現在では、老子信仰・元始天尊信仰との関わり、道教経典との関わり、音楽・舞踊との関わり、養生思想との関わりなどを含んだ、白居易と道教に関する論文を構想しており、25年度中には、雑誌論文として発表することを予定している。 24年度はまた、23年度を承けて、鶴が李白・白居易の詩文の中でどのように詠じられているかを検討した。鶴に関しては、近代の日本の小説では、中勘助に同名の小説があり、また、木下順二の有名な戯曲「夕鶴」は一般に広く知られているところであろう。目を欧米に転じると、ロシアン・アヴァンギャルドの詩人として知られるフレーブニコフに「鶴」と題する長編の詩が存する。李白と白居易には、多くの共通点があるが、鶴に対する愛好もその一つであろう。そして、李白は黄鶴、白居易は白鶴に対する言及が顕著である。成果報告書では、李白・白居易を中心に、鶴が中国の詩文の中でどのように描かれて来たかを、先秦に遡り、魏晋南北朝の状況を踏まえて考察し、報告する予定である。
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