本研究は、曾ての汝陰國であった中国安徽省阜陽市から出土した前漢代時代の竹簡『蒼頡篇』について、保存機関等の協力を得ながら、原品の精査を進め、撮影(含旧写真複写)、文字採録等を行ない、遺文のデータベース化をはかり、秦代の成立とされる古籍の原形を復元して、古代識字教育課本の伝承と流布の実態を明かそうとするものである。 本年度(~平成23年3月31日)の研究実施計画 夏期(7月17日~)の海外渡航調査では、原簡の保存機関・阜陽博物館の所在地等に滞在して、関係人士の協力と支援を得て、同館所蔵の『蒼頡篇』残簡の実査、模写、及び撮影等を行ない、併せて旧写真資料(出土直後の原始写真等)の探索、入手、複製等も試みて、その後、出土情況等の確認を果たした。 次いで秋、冬期(9月15日~)には、撮影した写真の処理を含め、取得諸資料の整理、分析と共に、一部、調査協力者1名を用いて、古文献中に散見する『蒼頡篇』関連記事の抽出を試み、佛書、韻書、音義書等から相当数の残句、遺字を確認してデータ化した。 その後春期(3月7日~)の海外渡航調査では、頭初の阜陽市への再赴予定を変更し、北京へ到り、阜陽漢簡『蒼頡篇』研究には不可欠となる北京大学新牧の漢簡を閲覧した。関係諸家の支援を得て、原簡の一部を詳覧することが叶い、古籍『蒼頡篇』に関する研究を推進する重要な素材を得た。以上、本年度の調査、研究の実施状況は、計画、予定を超えるものとなった。
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