1)資料の収集とデータベース化 関係資料として本年度は、「満州国」からの留学生関係の復刻資料(龍渓書屋)を入手することができた。また、30年代後期中国人日本留学生が出していた新聞『留東新聞』発行停止となった後、それを受け継ぐかたちで『遠島新聞』が発行されたことなどを確認できたが、『遠島新聞』の中国国内での所在等々も確かめられていない(同資料等々について日本国内にはおよそ存在しないと思われる)。だが、本研究課題に関する研究は、こうした一次資料の発掘、既存の事実のの確認など少しずつではあるが間違いなく前進している。中でも進んだのが、中国人日本留学生の美術活動、木刻活動の部分である。東京美術学校西洋画科を出て、日本亡命中の郭沫若が37年盧溝橋事変後に単身日本脱出を果たしたことに起因した「日本人民戦線事件」の関係者である王道源、また広東省出身の木版画家黄新波などについては遅まきではあったが、本年度の資料調査で大きな収穫を得ることができた。台湾台北でも台湾大学、国史館などどの研究連携についても確かな足掛かりを得た。この意味で本研究課題はいまようやくその入り口、手掛かりを得たと言っても過言ではない。現在も収集した資料の整理とデータベース化を進めている最中である。 2)成果の公開 昨年12月以来、黄新波に関する所論を中国文芸研究会月報に連載中である。また、昨年7月に王建華訳で、訳書『東京「左連」重建後留日学生文芸活動』が上海社会科学院出版社 から出版された。
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