研究課題/領域番号 |
22520354
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
桑島 道夫 静岡大学, 人文学部, 准教授 (80293588)
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研究分担者 |
重近 啓樹 静岡大学, 人文学部, 教授 (10178866)
竹ノ下 弘久 静岡大学, 人文学部, 准教授 (10402231)
戸部 健 静岡大学, 人文学部, 准教授 (20515407)
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キーワード | 在日華人 / アイデンティティ / 文化 / 家族 / 階層 |
研究概要 |
本共同研究は、従来、中国中心化に向かう引力が避けがたく働いてきた華人研究において、一国主義的な国民国家の歴史観を超えた視点に立って、主として在日華人のより私的な空間に迫ることを目的としている。家族や在日華人に焦点を当てるのはそういう意図から発しているが、特に華人の移民性・移動性という視点の導入によって、近代に対抗するトランス・ナショナルな文化空間の構築を図ってきた。また、本共同研究の特徴は、外枠としての法制度や経済から帰結されがちだった従来の華人研究とは異なり、その私的な空間に寄り添う「文化」に注目してきところにある。エスニシティにおける「文化的アイデンティティ」を重視するスチュアート・ホールが述べるように、アイデンティティは表象の外部ではなく内部で構築されるからである。 これまでのところ、中国、インドネシア、アメリカ、スウェーデン等で開かれた国際シンポジウムで積極的に発表を行なうと同時に学会の最新動向を吸収し、仮説の精緻化を図ってきた。さらにまた、平成22年度科学研究費繰り越し申請事業として、藤井省三東大教授講演会(「東アジア・アイデンティティと『阿Q』像の系譜――夏目漱石から魯迅、村上春樹、ウォン・カーウァイ(王家衛)まで」)を開催した。 藤井教授は日中国民国家の文化的アイデンティティを表現してきた作家・映画監督たちが、トランスナショナルな東アジアの底流において確かにつながっていることを明らかにした。こうした想像の共同体としての「東アジア・アイデンティティ」の実体を一歩進めて捉えるためにも、今後は、在日華人の心の拠り所や心象に丁寧に迫ってゆきたい。
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