研究課題/領域番号 |
22520354
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
桑島 道夫 静岡大学, 人文学部, 准教授 (80293588)
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研究分担者 |
重近 啓樹 静岡大学, 人文学部, 教授 (10178866)
竹ノ下 弘久 静岡大学, 人文学部, 准教授 (10402231)
戸部 健 静岡大学, 人文学部, 准教授 (20515407)
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キーワード | 在日華人 / アイデンティティ / 文化 / 家族 / 階層 |
研究概要 |
中国語圏の近現代文学文化研究を専門とする桑島は、近現代中国文学に見る<家>と<近代家族>の変容を、台湾や香港と比較対照しながら分析してきた。『毎日新聞』文化欄に連載したコラムでは、高度経済成長とともにあらわになってきた<近代家族>の崩壊と再構築への模索-具体的には、現代中国文学に見る、<家>や地縁社会から勇まし<飛び出た娘たちの<母探し>=<自分探し>や、一人っ子世代の孤独・<個>のゆらぎ等々-を紹介して相当の反響を呼んだ。これも本研究の一環である。 日本と台湾における家族的背景と社会階層の関わりについて計量データを中心に分析してきた竹ノ下は、スモール・ビジネスの創始とその存続に家族がどのような役割を果たすのかという点に注目しながら研究を行なってきた。中でも、Comparative Social Research,に掲載されだ"Family, Labour Market Structures, and the Dynamics of Self-Employment : Gender Differences in Self-Employment Entry in Japan, Korea and Taiwan."(査読有)では、日本と韓国・台湾の自営業者における家族的背景(慣習)と労働市場を関係づけながら、それぞれの国情を反映するジェンダー上の構造的な不平等(妻の被搾取的状況)を理論的に究明した。 戸部は、近代中国における<家>と近代教育との関係、具体的にはこの時期に学校で提示された家庭教育論と当時の<家>での教育との間にどのような違いがあったのか(なかったのか)、ということに関心を持って研究を行なってきた。その研究成果の一端は、「平民教育と天津社会-中華民国北京政府期における『社会教育』の地域性」(山本英史編『近代中国の地域像』所収、山川出版社)として公開された。 また、2011年12月には荒牧草平九州大準教授に、家族と教育達成との関係について講義と専門的知識の提供を戴いたが、最終年度に向けて、理論的な枠組みを再検討する良い機会となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究分担者の一人、重近が不幸にも平成23年11月に逝去したが、重近が担当予定だった「中国の伝統的家族観」という役割分担は、外部招聘講演者のサジェスチョンを参考にしながら戸部や桑島がカバーするので、基本的に問題はない。資料はすでに選定、入手済で、今後、桑島・戸部が読み込み、分析する。
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今後の研究の推進方策 |
『国際移住の社会学』(2010年)で田嶋淳子氏も指摘するように、(華人研究に不可欠な)国際移住研究にとって、もっぱら都市や社会をベースに研究することには制約があるだろう。逆に、<家>の慣習や教育、そして<文化>は、場所の制約から比較的自由であると同時に、何よりエスニック・アイデンティティを保証する重要な要素だと言える。とすれば、都市社会学で究明されてこなかった、こうしたファクターに注目し、地道に分析してゆくことこそが、本研究の目的を達成する近道ではないだろうか。
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