研究課題/領域番号 |
22520354
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
桑島 道夫 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (80293588)
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研究分担者 |
竹ノ下 弘久 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (10402231)
戸部 健 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (20515407)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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キーワード | 在日華人 / アイデンティティ / 文化 / 家族 / 階層 |
研究概要 |
中国語圏の近現代文学文化研究を専攻する桑島は、楊逸の作品を海外華人文学の脈絡のなかで読み解いた。たとえばその「天安門事件」の表象は在欧米華人作家と同様、作者が活動する国や言語圏の読者の期待に寄り添っている。一方、小説に表現された青春や自由は、中国近代詩のはかなき青春と言える徐志摩の詩とつながる歴史性と普遍性を持ったものであった。また、祖国と移住先のはざまで自分の居場所を求めて悩むという移民小説の王道と言えるテーマにあって、楊逸文学に登場する華人たちは、祖国への強い帰属意識が顕著なそれまでの華僑とは対照的な、「新華僑」的なこだわりのなさ(たとえば民族教育を子の世代に押しつけない傾向)が特徴的である。 日本と台湾における家族的背景と社会階層の関わりについて主に数理社会学の観点から分析を行ってきた竹ノ下は、日本と韓国・台湾の自営業者における家族と労働市場をめぐってジェンダー間の格差を明らかにすると同時に、それぞれの地域の文化的慣習的背景の相違――たとえば女性の結婚後の離職率の高さはとりわけ日本に顕著である――を浮き彫りにした。 中国近代史を専攻する戸部は、戦前期東京における華僑教育の動向を、東京華僑学校を中心に追った。その結果、従来あまり詳しく知られていなかった来歴、組織構成、財政状況、教育内容、学生の動向などを明らかにすることができた。また、特に学校の組織構成や教育内容を当時の中国本土の状況と比較したことで、中国政府の東京華僑学校に対する影響の度合いを知ることができた。1930年代以降、東京華僑学校は、中国政府によって規定された教育方針にできるだけ合うよう組織構成や教育内容を改良しようとしたが、日中関係の悪化などに起因する財政上の困難や、日本政府による教育への介入などにより、十分な成果を上げることができなかった。中国政府の東京華僑学校への影響は限定的であったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
理由
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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今後の研究の推進方策 |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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