本研究は、中国宋代における別集の整理・編纂、および別集に附された注釈をめぐる諸問題について、蘇軾・黄庭堅の詩文集を主たる対象としつつ、宋代文学全般を視野に入れた総合的な考察を加えることを目的とするものである。 本年度は特に陸游・楊万里ら南宋文人の別集を視野に入れながら、年譜との関連から見た蘇軾・黄庭堅集の編纂過程に関する研究、書と尺牘の収録状況を手がかりにした蘇軾・黄庭堅集の伝承過程に関する研究、そして蘇軾・黄庭堅詩注における真蹟・石刻資料の活用に関する研究に重点を置いて研究を進めた。 以上によって、宋代における年譜編纂と詩文集編纂とが密接な連関のもとに行われていたこと、いったん成立した詩文集に親族や知友の所蔵する書簡などが増補されていったこと、またかかるプライベートな資料群が注釈という形で詩文集の編纂に活用されていたことなどを、蘇軾・黄庭堅のみならず、陸游・楊万里の別集にも即して明らかにした。従来の別集研究には見られない視点からの研究として少なからぬ重要性を持つだろう。 上記の研究成果については、2013年5月に台湾大学のセミナーにて「中国文集編纂的唐宋転型」と題し、また東華大学のセミナーにて「経典確立与改定―宋代文集編纂与解釈」と題して概要を口頭発表した。近く論考の形でも公表の予定である。 また、別集に関する問題を正面から取り上げたものではないが、楊万里に関する研究成果の一端として、9月にカン州師範学院にて開催の第8回宋代文学国際学術研討会において「楊万里与『詩債』」と題する発表を行った。同発表は近く中国の『復旦大学学報』に掲載の予定である。
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