研究課題/領域番号 |
22520360
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小杉 世 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (40324834)
|
キーワード | ポストコロニアル / オセアニア / マオリ(語) / 先住民言語教 / 先住民・移民文学 / 演劇とコミュニティ / グローバルとローカル / アボリジニ |
研究概要 |
前年度に国際学会で行った研究発表に基づく論文'Hauora Maori : Indigenous Language Education, Environment and the Production of Literature'では、ニュージーランドにおける先住民文化の再構築において鍵となる概念であるマオリの'hauora'(健康)という問題に焦点をあて、先住民言語教育、環境問題、土地権問題、先住民文学とメディアといったポストコロニアル文化形成の諸相を論じた。6月のThe 11^<th> Triennial Conference of SPACLALSでは、日本とポリネシア文化との関係性のなかで日本人読者がどのようにオセアニア文学を読むかという可能性について教育の現場から考察する口頭発表を行った。今年度は数回にわたり、ニュージーランド、オーストラリア、ヴァヌアツ、パプア・ニューギニア、フィジーにおいて、先住民・南太平洋移民系の演劇、先住民アートと先住民医療、言語教育(政策)に関する現地調査を行った。ニュージーランドでは、Taki Ruaが15年間継続しているTe Reo Maori Season Playというマオリ語劇の初等・中等教育機関巡回上演に関する調査、マオリ・南太平洋移民系のコミュニティにおける演劇活動の視察とインタビューなどを行った。ヴァヌアツでは、医療(健康)や環境問題、教育の取り組みの一環としてビスラマ語と英語によるコミュニティ・シアター活動や映画制作を行うWan Smolbag Theatreに関してインタビューとロケの視察を行った。フィジーではThe 1^<st> Literary Festivalに参加し、フィジー人とインド系フィジー人の異なるエスニック・グループからなるフィジー社会における「国民文学」の可能性について考察する機会を得た。今年度の現地調査に関しては2012年5月に出版予定の報告論文に詳述する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は現地調査に関しては、かなりの収穫が得られ、ネットワークも広がった。マオリ語マルチメディア教材の作成に関しては現地調査とその準備にかなりの時間を要したため、また補助金のほとんどが現地調査に必要であったため、完成と出版は最終年度に持ち越しとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
先住民・移民文学のうち、コミュニティとの関わりの深い演劇が調査の中心となるため、テキストを読むだけでなく、現地での上演の視察などが必要となる。最終年度(H24年度)は、本科研申請時点ではハワイ・ミクロネシアでの調査及び博士論文の執筆がおもな計画内容であったが、現在まで行ってきたポリネシア、メラネシアでの調査の補足調査を補うことも必要かと思われる。
|