当初の研究計画通り、初年度であるため、これまで漢~梁の時代の唱和集に関して行ってきた研究を、その後に発表された最新の研究成果に基づいて、より正確なものにしていくことから着手した。その基礎となる、最近日中両国で盛んに出版されている、漢魏晋南北朝の文学に関する研究書の調査・収集を行い、それら収集した資料に基づいて、旧稿に補訂を加える作業に入った。具体的には、各種の書目類や文学者の年譜などの最新の研究の成果を取り入れながら、旧稿で考察した唱和および唱和集の編纂の実態に関して、さらに細かいところを考証する作業を行った。作業の進捗状況としては、現在までに、「両漢・三国の唱和集」「両晋の唱和集」の二篇の補訂を一通り終えたところである。 その一方で、研究計画に基づいて、次年度以降の準備として、隋以降の唱和集の研究に必要な資料の調査・収集を開始した。具体的には、大阪府立中之島図書館・国立国会図書館・国立公文書館(内閣文庫)等を訪れ、『翰林学士集』や『網川集』等に関する貴重な資料を多数閲覧することができた。これにより、次年度における初盛唐の時期の唱和集に関する研究を円滑に開始できる準備が整った。なお、隋の唱和詩集『文会詩』に関しても、今年度の調査を踏まえて次年度に論文を執筆・発表する予定であったが、調査が当初の予定よりもはかどったため、今年度内に論文を執筆し、『中国文史論叢』第七号に発表することができた。本論文は、『文会詩』に関する初の専論となっている。
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