ウガンダで、メモリーブックの書き手およびワークショップの実施者にインタビューをした結果、以下のことが分かった。(1)メモリーブックのワークショップに農業技術や経営技術のワークショップを組み合わせて実施している。その結果、書き手は執筆と生活向上のスキルを同時に習得している。書き手は両方を評価していた。しかしそれが具体的にメモリーブックの記述にどう反映しているのかまでは明らかにできていない。(2)執筆技術の高くない書き手は、高い書き手の記述を引用することがあることが分かった。そのことを認めたがらない書き手もいた。継続的に執筆支援をすることで、書き手は2冊目、3冊目を執筆し、より自信を高めることができると思われる。(3)ただし、ウイルス治療薬の普及が最大の課題となるにつれ、メモリーブックのような精神的、社会的支援に資金が集まりにくくなっていることが分かった。本研究成果を発表することで、そのような支援の重要性を社会に訴える必要性がある。 前研究課題「社会運動としての文学ーーアフリカのHIV/エイズと小説」と本研究課題の成果を合わせて、単著『エイズと文学ーーアフリカの女たちが書く性、愛、死』(世界思想社、2013年)にまとめた。一部では、エイズを扱ったテレビドラマ、演劇、文学コンテストなど運動の現場での物語を論じ、二部では、メモリーブックをはじめとするライフストーリーを論じ、三部では小説を論じた。
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