本課題は中華民国政府が、青少年の教化手段として青少年向け雑誌をいかに利用し、またその雑誌を舞台とした作家たちが、台湾文学史上どのような役割を果たしたかを『幼獅少年』を主資料として考究しようとするものである。 22年3月に、救国団の編集発行による姉妹誌とも言うべき『幼獅』の創刊について執筆者群の国民党での位置を整理した上で(香川大学経済論叢82-4)22年度は『幼獅少年』の記事収拾を中心に行った。 22年6月及び23年3月に台北市の国家中央図書館に於いて複写作業を行い、創刊号(1976)から62号(1981.12)までの主要資料の主要部分の収拾を終えた。複写資料については帰国後記事分野ごとに資料チェックと整理作業を行った。 また6月訪台時に、同時に中華民国政府の報道・出版管制に関する研究書及び『幼獅少年』に執筆した作家の作品なども購入した。 また今回複写した期間の2年後辺から小説をこの雑誌に連載し始める張大春の作品に関しては23年3月に従来から続けている注記を発表した。 なお、11月には台南の真理大学台湾文学資料館において、張良澤名誉館長(前台湾文学系主任)と面談し、中華民国政府の管制から逃れて活動した作家たちの活動舞台となった雑誌(現在ではこの資料館以外で系統的にバックナンバーを調べるのは難しい)の収蔵整理状況についてお話をうかがいながら確認した。これは本課題の対象雑誌の対照群として視野に入れておくべき分野であったので、有用な機会であった。
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