26年度は台湾台南市の国立成功大学台湾文学系客員研究員として台湾での勤務であったため、研究計画を若干修正して、『幼獅少年』刊行を多角的に捉えるべく、『幼獅少年』の機能を、救国団による政府側、教育者側からの知識伝達機能と、中学生の作品発表、創作勧奨機能として考え、従前のものに台南地区での青少年文芸活動調査を加えることとした。『幼獅少年』の複写資料収集と整理を引き続き行ったが、平行して、調査したのは以下のものである。 まず、『教育部公報』、成功大学図書館所蔵の『教育文摘』など教育行政関係の資料により当該雑誌刊行初期、読者層である青少年に与える情報としてどのようなことが期待されていたかを調査した。 次に当時の学校現場で国民中学生にどのような文芸発表の機会が与えられていたか台南地区についての調査を開始した。台南県(現在は台南市域)の2カ所の国民中学校での校刊の発行状況の調査(一部は既に停刊状態)に加えて、校刊を比較的欠けずに保存している台南一中で資料複写を行うとともに、林皇徳教官から学生の参加状況について聞き取り調査を行った。 更に救国団は、地方ごとに小学生~高校生を対象とした文芸発表誌を刊行しており、台南地区は『南市青年』『南縣青年』(台南市縣合併後は前者に統合された)を発行している。これらは系統的に保存されていないため調査が困難であったが、個人蔵を含め閲覧可能なものは複写し、更にかつて編集長を務めた方への聞き取りも行った。 以上のことをふまえ、知識伝達機能については、論文『台湾の政治。社会と少年雑誌編集』にまとめた。なお。発表機能については続編にまとめ27年度中に公刊の予定である。
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