研究課題/領域番号 |
22520368
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
東 英寿 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (90218686)
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キーワード | 歐陽脩 / 歐陽文忠公集 / 歐陽脩未発見書簡九十六篇 / 歐陽脩散佚書簡 / 南宋古文の文体 / 周必大原刻本 / 中国国家図書館本 / 〓邦述本 |
研究概要 |
本年度は、先行研究の整理を行い、電子テキストを利用して基礎的データの作成、特に南宋時代の楊万里、萢成大の散文に関する電子テキストを作成した。このデータに基づき、南宋古文家の古文の特色を具体的に考察し、その成果をまとめ次年度に発表する予定である。 また、南宋時代の古文を考える上で、その影響を無視できない欧陽脩に着目し、南宋時代に刊行された彼の全集について考察を行った。具体的には、周必大が編纂した原刻本『欧陽文忠公集』に関する考察の成果を、九州中国学会で「周必大原刻本『欧陽文忠公集』百五十三巻について」と題して発表し、それを論文としてまとめた。この周必大原刻本を考察する過程で、これまで全く知られていなかった欧陽脩の未発見書簡を九十六篇発見し、日本中国学会で「欧陽脩の書簡九十六篇の発見について」と題して研究発表した。この成果は、朝日、讀費、毎日、共同通信、時事通信等の日本の多くのマスコミに取り上げられ、中国においても新華社が報道し多くの新聞に掲載され、人民日報や光明日報で特集記事も掲載された。今回発見した書簡については、「新見九十六篇欧陽脩散佚書簡輯存稿」(『中華文史論叢』、上海古籍出版社)と題した論文を作成し、その中で九十六篇を世界で初めて公開した。また、この発見について中国の南開大学に招待され講演を行った。 このように、今年度は南宋古文の考察とともに、南宋古文に影響を与えた欧陽脩について、その全集の考察を進め、その過程でこれまで全く知られていなかった欧陽脩の未発見書簡九十六篇を見つけだしたが、それは極めて大きな意義を有する重要な発見だと言える。今回の発見によって、中国の文学研究に新たな資料が出てきたことになり、今後の宋代の文学研究に大きく貢献できるからである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、南宋古文に関する研究で、文体の具体的研究については、データ作成をほぼ終え、(2)の順調に進展している段階に当たると言えるが、南宋における全集研究の過程で、これまで世界で全く知られていなかった欧陽脩の未発見書簡96篇を発見して発表し、中国文学研究に大きな貢献をした。このことは日本や中国のマスコミで大きく報道され、多くの研究者に注目されることとなるなど、当初の予想以上の研究に発展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通り、南宋古文の展開やその文体について具体的に研究を進めていく予定である。それに加えて、今年度南宋古文に影響を与えた駄陽脩についての考察過程において、これまで全く知られていなかった欧陽脩の書簡を96篇発見したことについては、中国文学における新たな資料の発掘であり、極めて重要な意義を持つと考える。そこで、この新発見の欧陽脩の96篇の書簡については、その内容についての具体的考察などをする必要があるので、今後この方面についてもあわせて研究を展開する予定である。
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