研究課題/領域番号 |
22520368
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
東 英寿 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (90218686)
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研究期間 (年度) |
2010-10-20 – 2014-03-31
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キーワード | 歐陽脩 / 新発見書簡96篇 / 南宋刊本 |
研究概要 |
昨年度の本研究において、従来全く知られていなかった歐陽脩の書簡96篇を南宋刊本である『歐陽文忠公集』から発見した。本年度は、この発見について更に考察を進め、5月に発行された『九州中国学会報』第50巻に論文「新発見の歐陽脩書簡について」を発表した。また10月刊行の『日本中国学会報』第64集に、「歐陽脩の書簡九十六篇の発見について」と題して論文を発表した。更に、新たに発見した書簡と通行本に収録されている書簡において一部内容が重複することに着目して、「歐陽脩新発見書簡の特色について」という論文を『比較社会文化』19巻(平成25年3月刊行)に発表した。 平成24年4月27日には、この発見について台湾東呉大学での学会(第二届中国古典文献学国際学術研討会)で研究発表を行い、8月には中国で開催された「歐陽脩国際学術研討会」で研究発表を行うなど国際的にも研究成果を発信した。 本研究での成果をまとめて、平成25年2月26日に『歐陽脩新発見書簡九十六篇ー歐陽脩全集の研究ー』(研文出版、全226頁)を刊行した。本書は、新たに発見した歐陽脩の書簡を日本で初めて公開し、更にそれに関連する研究をまとめたものである。 今まで全く知られていなかった歐陽脩書簡96篇を筆者が初めて発見したことは、中国文学を考える上で重要な意義を有しており、中国や台湾では大きな反響があった。『武漢大学学報』2012年第3期では「新発現歐陽脩書簡研究専題」として、本研究の成果に基づき新発見書簡の特集が組まれ、台湾では国立東華大学の『東華漢学』第15期に「この発見と研究動向について台湾の学会に報告する」として拙論「新見歐陽脩書簡考」が掲載された。 このように本研究の成果である歐陽脩の書簡96篇の発見は、中国や台湾にも大きな影響を与えており、その点においても本研究の大きな意義があると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、申請時、南宋時代の古文についての考察を中心としていたが、南宋時代の古文を研究する過程で、南宋時代の刊本である『歐陽文忠公集』に、これまで全く知られていなかった歐陽脩の書簡96篇が存在していることを発見したことにより、その九十六篇の研究が中心となった。本研究において、九十六篇を詳細に考察し、その成果を日本中国学会で発表した。そのことは、日本の朝日・毎日・読売等の各新聞だけでなく、中国の国営通信社・新華社による報道、人民日報、光明日報での記事掲載など、多くの反響を巻き起こした。 また、『武漢大学学報』2012年第3期では「新発現歐陽脩書簡研究専題」として、本研究の成果に基づき新発見書簡の特集が組まれ、その序言には「2011年は歐陽脩研究領域に重大な出来事があった。すなわち、日本九州大学東英寿教授がその年の日本宋代文学研究会(日本中国学会の誤り、筆者注)で公表したことがそれで……」と記述され「東英寿教授新発見歐陽脩散佚書簡解読」等4篇の論文が掲載された、また台湾でも国立東華大学の『東華漢学』第15期に「この発見と研究動向について台湾の学会に報告する」として拙論「新見歐陽脩書簡考」が掲載されるなどした。 このように、本研究は申請時の計画から方向がやや変化したものの、その研究成果は非常に大きく、国際的な反響も大きいものであった。 更に、本研究の成果として、最終年度に刊行する予定であった著書も、計画以上に研究が進展したことと、一刻も早く新発見書簡を公表する必要があるため、一年前倒しにして平成25年2月26日に拙著『歐陽脩新発見書簡九十六篇ー歐陽脩全集の研究ー』(研文出版、全226頁)として出版した。 以上の理由により、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
4年間を予定している本研究は、この3年間の考察において新たな資料を発見したということもあり、これまで非常に順調に進展した。そのため、3年目の昨年度にその成果の一部として、拙著『歐陽脩新発見書簡九十六篇ー歐陽脩全集の研究ー』(研文出版)を刊行することができた。拙著の刊行により、歐陽脩の書簡九十六篇の発見に関連する研究は、おおよそまとめられたことになる。 残りの1年については、これまで考察してきた南宋時代の刊本研究を踏まえて、南宋時代の文人における古文創作状況について研究を進めたい。特に、南宋の幾人かの文人、そのなかでも特に劉克荘を中心として、詩文創作観方面について考察を進めたい。具体的方法としては、彼の序文に見られる詩文創作観について、北宋時代の歐陽脩等の詩文創作観と比較することによって、その特色を明らかにしたい。 本研究の残された課題である南宋時代の古文の考察については、上述した劉克荘についての考察や南宋での古文評価の移り変わりを北宋時代との比較を通して考察するなどの方法で、多面的に推し進めてゆきたいと考えている。
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