今年度は、南宋の文学を考える上で重要な人物である劉克荘についての研究を進めた。彼の文学論と鑑定眼との関係に着目して、「劉克荘の鑑定眼」と題して、平成25年11月に早稲田大学で開催された第3回南宋江湖派研究国際シンポジウムにおいて研究発表を行った。その成果を、「劉克荘の鑑定眼-その詩文創作観との関連-」と題して論文にまとめ、『比較社会文化』第20巻に発表した。 また、研究期間の2年目に、中国の河南大学で開催された第七届宋代文学国際研討会に参加して研究発表を行い、その内容に基づいた論文「中国国家図書館蔵南宋本《歐陽文忠公集》考」が平成25年8月に出版された『宋代文学国際研討会論文集』(河南大学出版社)に収録されて公刊された。この論文は南宋時代の文集編纂についての考察で、本研究におけるテーマの一つである南宋時代の編纂事業と関わるものである。 この4年の研究期間中に発見した、中国宋代の文人・歐陽脩の書簡九十六篇について、『新見九十六篇歐陽脩書簡箋注』として、平成26年6月に上海古籍出版社より出版されることが決まり、その契約を行った。本年度は、この拙著編纂のため、九十六篇について校点を施し整理するとともに、解説部分の論文を作成した。本書は、中国の洪本健氏との共著の形をとり、洪氏が箋注部分を作成することになっている。 さらに、本年度は最終年度でもあるので、研究成果の発信にも力を入れて、平成25年10月27日~11月3日の日程で台湾に出向き、本研究4年間の成果の一端について講演した。すなわち、「歐陽脩書簡九十六篇之発現」、「従虚詞的使用看歐陽脩古文特色」、「歐陽脩新発見書簡九十六篇」と題して、台湾大学、台湾師範大学、東華大学で、それぞれ中国語で講演を行い、あわせて台湾の学者達と学術上の交流を行った。
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