本年度は主として資料の収集に努めた。周日校刊「三国志演義』は、日本国内には東京の国立公文書館・名古屋の名古屋市蓬左文庫・仙台の伊達文庫(宮城県図書館)に蔵されている。また中国には中国国家図書館・中国社会科学院・北京大学図書館に蔵されている。今年度はこれらの内国内の三種と北京大学図書館蔵本の資料の複写を行った。(ただし北京大学図書館蔵本は、図書館の規定により全体の三分の一のみ複写した。)中国国家図書館蔵本は23年度に複写を行う予定である。また中国社会科学院蔵本の閲覧を行い、朝鮮翻刻本とほぼ同じ内容であることを確認した。なお中国社会科学院図書館では、資料の複写は認められていない。 これらの資料の閲覧・調査や複写した資料の比較から、中国社会科学院蔵本はその他の周日校刊本とは版式が異なり、刊行年も早いであろうことが確認できた。また北京大学図書館蔵本は名古屋市蓬左文庫蔵本・国立公文書館蔵本・伊達文庫蔵本と版式こそ同じではあるが、同版ではないことが確認できた。そして日本国内の三種類については、その印刷の状態から、蓬左文庫蔵本→伊達文庫蔵本→国立公文書館蔵本の順で印刷刊行されたことが分かった。さらに中国国家図書館蔵本の調査により、この問題をさらに追求する予定である。 また周日校刊本と密接な関係にある夷白堂刊『三国志演義』についても検討を行った。その結果、夷白堂本は中国社会科学院蔵本ではなく、その他の周日校刊本と密接な関わりがあること、書肆夷白堂独自の方法で文章を簡略化していることが明らかになった。そしてその成果を論文にまとめた。
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