研究課題/領域番号 |
22520372
|
研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
山口 謠司 大東文化大学, 文学部, 准教授 (00286915)
|
研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | リオン市立図書館 / 第一次世界大戦 / 敦煌本 / 文献学 / 蔵書 / 書物譲与 / 東西学術交流 / 書物鹵獲 |
研究概要 |
昨年度、筆者は、「写本から刊本へ――唐代通行『尚書』の研究」と題して博士学位請求論文を提出し、博士号を取得した。 本研究は、第一次世界大戦前後を挟んで、中国で発掘された唐代の写本(敦煌本)とまた我が国に平安時代以来伝わる写本の『尚書』を、宋代刊本と比較して、唐代通行の『尚書』が、いかに現在我々が読む『尚書』と異なっているかを文献学的に証明したものである。これは、あるいは経書受容の歴史を明らかにするものであるが、敦煌本は発掘されるとまもなく第一次世界大戦前にフランス、イギリス、ロシアなどに移送され、現在ブリティッシュライブラリー、パリ国立国会図書館、レニングラード図書館などに保管されている。 これらのものは、一部、写真によって中国や日本の研究者の研究に供されたが、じつは現物を精査することなしには、不鮮明な箇所も少なくなく、またその膨大な量の写本の全体像を捉えることなしには、ほんの一部の写本だけでは明らかにし得ない文献学上の性格もある。 筆者は、すでに二十年ほど前から現地に留学して敦煌本の研究を行ってきた。博士論文では、その点を十分に生かして『尚書』の敦煌本の性質を明らかにしたことと考えている。 本年度は、こうした研究を踏まえ、特に政治的な問題などを加味しながら、第一次世界大戦を契機として始まった東西の学術交流について研究を行った。たとえば、フランス、リオン市立図書館に所蔵される『里昴中法大学1921年至1946年中文書目』の書籍を調査である。こうした研究を踏まえ、今後は第一次世界大戦前後を挟んだ書物の大きな譲与鹵獲について纏める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は、フランス、リオン市立図書館に所蔵される『里昴中法大学1921年至1946年中文書目』の書籍を調査した。本研究は当初予定していなかったが、第一次世界大戦後の書籍の移動、収集という点においてさらに大きな問題があることを明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究の推進に変更及び問題点はない。 本年度、筆者は、昨年博士論文で提出した「写本」から「刊本」へのテキストの変化と合わせて、第一次世界大戦前後に行われるようになる活版印刷及びそれにともなう読書人層の広がりなどをテーマに、文献がグローバル化する際の問題点などを研究する予定である。なお、これとともに、一九〇〇年代になって東アジアで盛んに作られていくことになる図書館というものがどのような機能を果たしていたかについてもさらに研究を進め、研究書として一冊に纏める予定である。
|