研究課題/領域番号 |
22520373
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
三田 明弘 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (00277865)
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キーワード | 比較文学 / 中国文学 / 説話文学 / 筆記小説 / 太平広記 / 容斎随筆 / 夷堅志 / 洪邁 |
研究概要 |
『太平広記』『容斎随筆』と唐代文献の関わりを中心に、以下の四点に重点を置いて研究を展開した。 (1)説話データベースの充実 『太平広記』『容斎随筆』説話・故事の話型情報をデータベースに入力し、相互に関連し合う説話カードをリンクさせ、データベースをより立体的な奥行きのあるものへと発展させた。さらに『旧唐書』『新唐書』等の史書、『法苑珠林』等の類書、唐代志怪小説類等の同話・類話情報を付加した。 (2)『太平広記』と日本の説話集及び唐代の類書・志怪小説との関連性の分析 日本説話と『太平広記』説話の比較研究を、キーワードやモチーフを手がかりに、従来の典拠論とは異なる角度から行うとともに、『太平広記』に多くの佚文を収録する唐代志怪『冥報記』及び『冥報拾遺』の『太平広記』の編纂コンセプトへの影響を分析し、その成果の一部を「『冥報記』と『冥報拾遺』」というタイトルで和漢比較文学会第4回特別例会において発表した。さらに『太平広記』と多くの説話を共有する仏教類書『法苑珠林』との比較分析を行い、その成果の一部を「『法苑珠林』説話にみる仏教的身体観」というタイトルで2011年度輔仁大學日本語文學系國際研討會において発表した。 (3)『容斎随筆』説話を通しての洪邁の歴史観の分析 昨年度に行った『容斎随筆』への「靖康の変」の影響の研究成果を踏まえ、『容斎随筆』における唐代の「安史の乱」への解釈を分析して、洪邁の歴史観を探り、その成果を「『容斎随筆』における歴朝人物評」というタイトルで、水門の会東京例会において発表した。 (4)内外の図書館・研究機関における善本調査・学術情報収集及び史跡調査 『太平広記』『容斎随筆』の和刻本や享受に関する資料の調査を、関東.関西・中部の文庫・図書館で行った。また、北京、西安、台北、沖縄等において『太平広記』『容斎随筆』の善本調査及び道廟や仏教寺院の史跡調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データベース活用による『太平広記』『容斎随筆』の分析は遅滞なく進行しており、その成果に関しても三回の公的な研究発表によって公開できた。さらに学術雑誌の刊行時期の関係で今年度の成果には含むことができなかったが、三回の研究発表のうち、2回分の成果は、すでに査読も合格し、学術雑誌への掲載が確定している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を相互に関連づけつつ、比較文学的見地からの『太平広記』『容斎随筆』の全体構造の分析を継続し完成させる。その成果に基づき、説話文学史上における宋代の意義に新見を付与する。
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