研究課題/領域番号 |
22520375
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
中村 和恵 明治大学, 法学部, 教授 (00268476)
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キーワード | 先住民族 / 文明 / 日本研究 / 植民地 / アボリジニ / カリブ / 国際情報交換 / 多国籍 |
研究概要 |
1(1)オーストラリア北部準州アリススプリングスのStrehlow Research CentreでTG。H:.Strehlowのフィールド日記など未刊行資料閲覧。Greame Shaughnessy研究員と、先住民族が秘匿を望む聖物などの所蔵資料について意見交換。同準州ダーウィンのPeter Spillett Libraryで警察資料など地元社会と先住民族の関係を示す資料や絶版書の閲覧。(2)オーストラリア・ヴィクトリア州立図書館、アデレード大学古文書館およびアデレード・ルター派古文書館においてT.G.H.Strehlow関連資料、とくに2011年初公開の書簡等新資料を閲覧。Barry HillのStrehlow伝に関する疑問点の裏付け調査。T.G.H。Strehlowのご子息との面談など関係者や識者との情報交換を行う。新資料を含め資料の整理・分析。 2ケンブリッジ大学および大英図書館で植民地行政官Hesketh J.Bel1の資料を継続、当時の先住民族観を分析。さらにベルが関東大震災後に日本を訪れた折、及び大戦間に、日記や新聞雑誌に書いた日本についての記述を閲覧分析。ケンブリッジではJohn Cardwell図書館員のご協力を得る。 3ヨーロッパ北方の先住民族についてエストニア共和国で資料や情報を得る。 4これまでの研究で得られた知見を含む一般読者向けの著書『地上の飯 皿めぐり航海記』を刊行。食材という主題でわかりやすく先住民族と日本人および他のいわゆる先進諸国の人々を同列に扱う視点を示し、異文化理解の態度と方法の一例紹介につとめた。同様に「あぶない石」(『世界』2011年6月号)「野蛮人と物差し」(同9月号)でも欧米・オーストラリア先住民・日本の世界観を比較検討する視点を紹介。資料の整理・分析作業に時間がかかり遅れている研究ノートのブログによる発表が今後の課題。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国外にて研究する期間を勤務校から与えられている時期における科研費課題の研究のため、新資料や国外の研究者、識者、先住民族の方々からの情報等がたくさん得られ、これらを集め検討することに時間がかかり、執筆し発表する活動が遅れがちになっている。URLについても立ち上げるところまではこぎつけたが、コンテンツのアップロード以前に検証したい新事実や新資料が数多く集まっており、この整理・分析が今後の課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
上記の達成度欄でも述べたように、国外で収集した資料を整理し、研究内容の発表、論文やURLコンテンツのアップロードを順次進めていく。同時に一般読者向けのコラムや著書の執筆を前年、前々年度同様につづけて行う。新しい課題としては、日本国内およびその周辺地域の先住民族に関する概説の整理をし、これまで調べてきた他地域の場合と比較する視点を得ることである。問題点は上記の通り、数多く集めた貴重な資料を整理・分析することに時間がかかることだが、これまでに集めた資料により得られる知見・視点は、世界的にも前例のない比較文化研究の領域として意義ある興味深いものである。とくにテッド・ストレローのオーストラリア先住民研究をめぐる論争と、ヘスケス・ベルのカリブ民族に関する政策をめぐる議論は、日本では一部専門家以外にはほぼまったく知られていないが、先住民族の存亡に関わる概念、少数言語文化の保存および翻訳、そして欧米文化と非欧米文化の交流あるいは衝突地点に生じる諸問題を日本人の立場から比較検討するにあたり、きわめて重要でぜひ紹介されるべきものと考えている。今年度中に可能な範囲で丁寧な整理・分析を優先し、今年度中に公開されるまでには至らないにしても草稿を準備し、継続して研究者および一般読者を広く利するよう、研究成果を生かしていく所存である。
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