研究課題/領域番号 |
22520377
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
藤井 麻湖 (藤井 真湖) 愛知淑徳大学, 交流文化学部, 准教授 (90410828)
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キーワード | チンギス・ハーン / 二頭の駿馬 / 元朝秘史 / 馬頭琴伝説 |
研究概要 |
本年度において最も大きな成果といえるのは、本研究の契機となったモンゴルの馬頭琴伝説についての考察をドイツで行われた国際シンポジウムにおいて発表し紹介できたことである。この考察はすでに中国においては紹介されておりモンゴル口頭伝承研究者には広く知られているが、西側諸国には知られていなかった。馬を非正妻の隠喩とする本論文の構造分析そのものについては特に異論は出なかったものの、余りに単純化されているのではないかという疑問も持たれたようである。しかし、当該シンポジウム出席者はその後の研究代表者の仕事を全く知らないため、そのような印象をもったのであろうと思われる。それゆえ、本研究課題の土台となった諸考察も今後英語による発表により広く知られるように工夫する必要があることを実感した。本発表については英語によるフルペーパーを既に提出しているので、2012年度中には刊行されるであろう。また、本シンポジウムで改めて、もうひとつの研究課題の『黒馬』における隠喩の衰退と消失の論考が不可欠であることを思い知らされた。 本研究は『元朝秘史』の馬の隠喩とも密接に連動しているが、本研究と連動した研究結果として、2011年に論文「『元朝秘史』の地の文における"我々"表現に隠された意図-巻3第110~巻11第263節における一人称複数形についての考察-」を形にすることができたことも大きな成果といえる。本論文の内容の前半部はモンゴル国で行われた国際学会において発表し、モンゴル語によるフルペーパーを学会本部がすでに受理しているので、そのうちに公刊されるであろう。また、本論文の全体像は、2011年度の日本モンゴル学会の秋季大会で紹介することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題と密接に関わる『元朝秘史』の研究に進展が見られたため、本研究課題のとくに『黒馬』の考察に力を注げなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
『チンギス・ハーンの二頭の駿馬』の、とくに「オルドス系統」の写本類における隠喩を直接に考察する論文を、23年度の夏季におこなった写本調査で得た写本をもとに執筆することで端緒をつくりたいと考えている。
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