本年度の研究計画の中で実施できたのは、次のものである。 ①アジア民族学会春季大会において『チンギス・ハーンの二頭の駿馬』における二頭の駿馬の歴史的モデルを提示した。②岐阜モンゴル協会において、本研究の土台となった馬頭琴伝説における馬の隠喩の講演をおこなった。 当初の予定にはなかったが、本研究と関連するその他の実績を挙げると次のとおりである。 ③中国社会科学院民族文学研究所主催の『ゲセル』(モンゴル三大英雄叙事詩の一つ)の国際シンポジウムが中国内蒙古自治区巴林右旗でおこなわれたが(8月12~15日)、当該学会において馬の隠喩が後退していると考えられる当該英雄叙事詩にも馬の隠喩の痕跡が認められるという内容の発表を行った。④モンゴル文学会秋季研究発表会において、馬の隠喩研究を研究代表者のこれまでのモンゴル英雄叙事詩の枠組みに位置づけながら、馬の隠喩の有効性を提示する発表を行った。⑤当該研究と密接に関わる『元朝秘史』関連の論文を3本公刊した。⑥中国北京市における中央民族大学において、研究者を対象とした研究会で研究代表者の研究を発表したほか、当該大学の大学院生と学部生のそれぞれを対象とした授業を行うことで、馬の隠喩研究の重要性を強調する講義をおこなった。⑦内蒙古のなかでもモンゴル人人口の多い中国内蒙古自治区通遼市にある内蒙古民族大学蒙古学学院において、馬頭琴伝説における馬の隠喩についての講演をおこなった。 以上、本年度の実績は、主に、国外の学会や研究機関において、モンゴル・フォークロアにおける馬が隠喩(=非正妻)の意味を持っているという仮説をモンゴル語および英語で伝えたということが大きな実績と言える。
|