本研究は、文献研究とフィールドワークを併用して、中国の文化的多様性と画一性、なかでも漢族と少数民族の間に見られる多様性と画一性を検討するという、研究の全体構想の一部分であり、本研究におけるその具体的な課題は、中国の民衆に広く愛好されている語り物文芸の演目「梁山伯と祝英台」のテキスト(漢族による漢語のもの、少数民族による漢語のもの、少数民族による少数民族言語によるもの)を比較検討し、テキスト間の関連性を解明することである。 本年度は、文献調査において「梁山伯と祝英台」のテキストを収集すること、フィールドワークにおいて、現在も口頭で伝承されている「梁山伯と祝英台」の存在を確認することを目的とした。文献調査は中華人民共和国広西壮族自治区図書館、広西壮族自治区柳州市立図書館、香港特別行政区図書館などで実施し、漢族による漢語のテキストとして、「祝英台」「梁山伯与祝英台」「祝英台別友」などの漢族の古典劇の台本を35種類、「梁山伯与祝英台」「英台回郷」など漢族の語り物テキストを15種類収集した。 また中華人民共和国広西壮族自治区南寧市および柳州市におけるフィールドワークにおいて、同地域で現在も「梁山伯与祝英台」を主題とした物語歌が辛うじて伝承されていることを確認するとともに、伝承されてきた手書きのテキストの存在を確認した。これらの存在が確認できた物語歌については、平成23年度に映像記録化できるよう、物語歌の歌い手と協議をすすめているところである。 またテキストの比較にむけた作業として、これらの収集したテキストの一部を電子テキスト化した。
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