平成24年度の研究活動は、国内・国際学会での発表と意見交換、およびインド国内における聞き取り調査及び写本資料調査を行った。平成24年9月に皇學館大學において開催された日本宗教学会第71回学術大会では、「翻訳された理想の女性像ー叙事詩『ラーマーヤナ』をめぐって」と題して、マシーフによるペルシア語訳『ラーマーヤナ』が、イスラーム以前からの女神のイメージを残したペルシア古典文学の女性像に、火による浄化儀礼を受け入れる敬愛されるべき女性像を加えて、ヒンドゥーと共通する徳目をもつ存在としてのシーター像を示していることを明らかにした。10月に東京外国語大学において開催された日本南アジア学会第25回全国大会では、「サンスクリット古典のペルシア語訳とカーヤスタのアイデンティティ」と題して、ヒンドゥー・ダルマの遂行者としてのカーヤスタが、イスラームの書記階級に求められた倫理的規範に共通する側面をもつことをSaratattva が示していることを論証した。平成25年2月には、Lucknow とGaya でカーヤスタの伝承やスーフィー・ハーンカーにおける修道法について実態調査を行い、文献資料を収集した。一方、Khuda Bakhsh Oriental Public Library (Patna) および Maulana Azad Library (Aligarh)で写本資料調査を行った。3月にアリーガルで開催されたInternational Seminar on Sufistic Literature Produced in Persian: Tradition and Dimensions においては、Sufistic Perception of Yoga と題して、Saratattva に示される『アムリタ・クンダ』のカーヤスタによる解釈を紹介し研究者らと意見交換し、論文も印刷予定である。
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