| 研究概要 |
当初の研究計画に沿って,(1)構文推意の研究,(2)語彙推意の研究,(3)推意に関する通言語学的検証,(4)一般言語学的検証,の研究工程のうち,(1)を完了させ,(2)は最終段階,次年度に完成する(3)(4)の工程二着手した。(1)については,以下の通りである。まず,日本語の構文の派生を格シフトから記述するために,《降格》と《昇格》を明確に定義し,その記述のための格助詞の区分(非斜格・第1～3斜格まで)をまとめた。以上の枠組みを用いて,使動構文に関する記述を行い,昇降格に関わる制約を二重ヲ格制約と関連づけて明確化した。二重ヲ格制約は,従来,形態論的な制約とすることが多かったが,他の多重格制約と同様に意味計算に関わる語用論的制約であり,意味的な分化について対格が他の形態格に比して不明確で弱いことを明らかにした。受動構文については,従来の間接受動と直接受動が,昇降格の観点から明確に定義できることを示し,両者の意味的差異が,構造的な違いだけでなく,視点者追加などの認知論的観点からの捉えるべきことを提案した。属性叙述構文についても6つのタイプに分けて,個々の特性を明確にした。(2)については,対象物の属性変化と他動性,意図性と事前予測などの観点から,語用論的特性を明確にするための枠組みを構築している。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な研究工程についてはおおむね順調に進捗している。構文推意に関する研究はおおむね完了して,一部次年度分の工程に着手している。語彙推意についてはややデータの集約に少し遅れが見られるが,次年度前半に完了する作業工程に大きな影響はなく,全体としては予定よりやや早めに進行することができている。
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| 今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿ってこれまで順調に研究工程の進捗が得られているため,次年度を完了年度として,語彙推意に関する記述と分析,構文推意に関する成果と合わせて,対照言語学的・通言語学的研究のとりまとめを行いう。さらに,一般語用論・一般言語学的な知見についても結論を出し,最終的な報告のとりまとめを進める。
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