研究概要 |
今年度は、中国語の選言接続詞について調査した。中国語には、haishiとhuozheの二つの選言接続詞があり、haishiは選択疑問文を作り、huozheは選言陳述文を作る。本研究では、まずhaishiの作る選択疑問文の構造について考察し、疑問を表わす助詞neの位置を手掛かりに、疑問文を結びつけていると考えた。Haishiが命題でなく疑問文を結びつけているならば、新しい選言の定義が必要である。まず、疑問文は、それに対する可能な答えを表わす命題の集合であるとみなされ、一方、選言は、それぞれの命題が話し手の知識状態に矛盾しないことを述べる命題の連言であると解釈できる。この2点から、p haishi qは、命題の集合の集合を表すとみなすことができる。この分析をもとに、無条件文の条件節におけるhaishiの用法を説明した。無条件文とは、「pであれ、qであれ、rである」というように、条件節に提示された内容に関わらず、帰結節が実現されることを述べる文であり、中国語では、wulun p haishi q,rと表される。無条件文の接続詞wulunは、命題の集合をとり、この集合が分割されて、一つ一つの命題が帰結節と結びつくことにより、複数の条件文の集合という無条件文の解釈が得られる仕組みを持つ。この仕組みによれば、wulunは問題なくq haishi qを項に取ることができる。さらに、この仕組みは、haishiとhuozheの交代現象を説明する。無条件文の条件節には、huozheも使われ、haishiが使われる場合と全く同じ意味を持つ。これは、wulun p huozhe q,rという命題においては、p huozhe qという部分が、分割されることなく帰結節と結びつくことにより、haishiの場合と全く同じ意味が導かれるのである。以上、中国語の選言接続詞の意味論を明らかにした。
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