研究課題
最終年度の今年度は、代表者と分担者が蓄積した記述分析の成果を検証するシステムを具体化し、同時に現象記述も続け、記述と分析のための理論基盤をより高度なものへ完成させるべく、以下を行った。(i) 日本語の接辞ホカ、シカ、キリ等を中心とする記述分析の成果を基に、日本語文構造の特質を見極め、言語一般の普遍的構造特質との関りを探る作業を進めて、構造構築の基盤を確立させた。その目的で「とりたて」関連の現象記述を進め、その検証作業と文構造構築理論の完成をめざした。(ii) 日本語個別の構造特質を明らかにした上で、他言語との構造特質の違いを探る対照研究として、否定現象を通して日本語スペイン語の対照記述分析を行った。言語間の普遍性や変異を探り、否定現象に最も関る叙述・述語のあり方が言語により異なるという分析を発展させ、その異なりが個別言語の特質と言語一般の普遍性とどう関るかを、日本語分析の成果とも照らし合わせて解明することを目指し、成果を論文にまとめた。(iii)ワークショップと言語コロキアム(名古屋大学、8月1~4日):言語の普遍性と個別特質を見極め、文構造構築理論を提示するという課題において、理論基盤の拠り所とする南カリフォルニア大学言語学科の傍士元氏から、氏が進める仮説構築及びその検証の方法論についての講義を受け、九州大学上山あゆみ氏、京都大学田窪行則氏、群馬県立女子大学深谷晃彦氏の参加も得て、議論を行った。傍士氏の言語能力解明の研究手法は、代表者が継続して行っている言語の普遍性と個別特質解明の方法論的基盤となっており、それに基づいて理論基盤がほぼ完成しつつある。(iv) 代表者は3月に南カリフォルニア大学へ出向き、傍士氏と理論構築についての議論や検証作業を行った。また滞在中に同大学言語学科の研究会で発表する機会を得て、他の多くの研究者達とも議論し、示唆に富む助言を多く得た。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
KLS 32. Proceedings of the ThirtySixth Annual Meeting (June 11-12, 2011)
巻: 32 ページ: 61-72
English Linguistics
巻: 29: 1 ページ: 155-165