研究概要 |
伝統的な山口方言ではアクセント核が特殊モーラ上に来ることができると知られているが,若年層ではその頻度が減少していると予測される。そこで,山口県内にのみ居住歴を持つ若年層16名(平均20歳1カ月)と老年層16名(平均69歳10カ月)の促音,機音,長音,二重母音/ai/の副母音の4種類の特殊モーラを含む60語(各15語)の産出において,特殊モーラにアクセント核を置く頻度を決定木分析の手法を用いて世代間で比較した。その結果,若年層ではアクセント核を同一シラブル内の1つ前のモーラへ移動させて発音する傾向が強く,老年層に比べて,特殊モーラにアクセント核を置く発音が大幅に減少していた。特殊モーラの自立性の順位は,老年層では先行研究とほぼ同様の結果の,/J/>/H/=/N/>/Q/であり,特殊モーラにおける聞こえ度(sonority)にもとづく階層の順序と一致した。しかし,若年層では,若干順序が異なり,/J/>/N/>/H/=/Q/と変化していた。同じ山口方言話者でも世代間で韻律的単位に大きな違いがあることが明らかになった。
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