本年度は,前年度までに行った,山口方言においてアクセント核が特殊モーラ上に来ることができるか否かについての調査結果をまとめ公表した。 山口県内にのみ居住歴を持つ,若年層16名と老年層16名の,撥音/N/,長音/H/,促音/Q/,二重母音/ai/の副母音の4種類の特殊モーラを含む60語(各15語)の産出において,特殊モーラにアクセント核を置く頻度を世代間で比較した。 その結果,若年層ではアクセント核を同一シラブル内の1つ前のモーラへ移動させて発音する傾向が強く,老年層に比べて特殊モーラにアクセントを置く発音が大幅に減少していた。特殊モーラにアクセント核を置いた頻度は,/N/では老年層39.58%に対して若年層5.42%,/H/では老年層44.58%に対して若年層1.67%,/Q/では老年層13.33%に対して若年層0.83%,/J/では老年層58.75%に対して若年層10.83%であった。 老年層の間で,アクセント核が置かれる頻度は特殊モーラによって大きく異なり,3つに分かれ,多い順に /J/>/H/=/N/>/Q/となった。若年層の間では特殊モーラにアクセント核が置かれる頻度はかなり少なくなっていた。少ないなかでも3つに分かれ,多い順に /J/>/N/>/H/=/Q/となった。
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