研究概要 |
本研究は、ミニマリスト・プログラムと呼ばれる生成文法理論の枠組みのもと、言語器官の中核を担う統語システム(統語関係を決定するシステム)の解明を試みた。具体的には、構造構築操作とその適用手順、統語システムから解釈システム(音声・意味を解釈するシステム)への転送操作とその適用手順、構造構築や転送という操作の適用手順を特徴づける最適性ともいうべき性質、これら3点に焦点を絞り、本研究が提示する研究課題に取り組んできた。 On Phases (Chomsky 2008) 以降、内的併合は統語構造に取り込まれた要素を対象とする併合と捉え直され、統語構造にまだ取り込まれていない要素を対象とする併合は外的併合と呼ばれ、両者の違いは、併合 (Merge(α,β)=>{α,β}) の適用手順の違いにすぎないと考えられていた。このようななか、本研究は、内的併合が統語構造内より要素を選び出す作業が課される分、外的併合より複雑な適用プロセスを経ている可能性を提起し、転送が位相ごとに機械的に適用されるのではなく、位相内の一致による格付与のもと適用されるとする分析を提出した。 本研究の成果の一部は Structure Building That Can't Be! (Epstein, Kitahara, and Seely 2012) および Language Variation and Parameterization Revisited (Kitahara 2013) にまとめられている。
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