本研究では、米国ウィリアムズ症候群協会と日本の保護者が構成するNPO法人の協力を得て、次の活動を行った。(1)平成22年7月、米国セントルイス市で開催されたナショナル・コンベンション(米国協会主催)に出席し、医学・遺伝子学会からの最新情報を得ると共に、当疾患者の発話活動を記録した。また、保護者へのインタビューを通して、歩行の遅れと発話の遅れとの間の相関関係を探った。(2)同年8月、米国ミシンガン州で行われたミュージック・エンリッチメントキャンプ(米国協会主催)にて当疾患者97名(十代46名(内2名は日本語母語話者)、二十代51名)と生活を共にし、単語反転ラドリング(言語遊び)に対する反応を観察した。また、無文字絵本を使ったナレーション活動を録音した。(3)同年10月、米国シアトル市で開催された専門者会議『Neurodevelopment and Cognition in Williams-Beuren Syndrome』(米国協会主催、アレン脳科学研究所共催)に出席し、非定型性言語研究の観点から議論に参加した。(4)同年6月と10月及び平成23年2月と3月、日本においては当疾患者が一同に集う機会が設けられていないため、東京都と豊川市にて被験者と面会し、当疾患者の単語反転とナレーションのデータを観察・録音した。(5)平成23年1月、米国ピッツバーグ市で開催された第85回アメリカ言語学会年次大会にて、5つの非定型性言語研究分野を含めたワークショップ「Language Disorders/Language Atypicalities:A New Perspective to Linguistic Theories」の共同開催を実現し、当研究者はこれまでのデータに基づく韻律構造の分析を『Williams Syndrome and Ludlings』の題目で発表した。
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