本研究の目的は、さまざまな「指導・実践場面」において依拠される「伝達・運用能力」の諸要素を可視化することで、広義の「コミュニケーション能力」を理論的かつ実践的に再検討することにある。具体的には、高度産業化社会に典型的な「マニュアル型」指導法の功罪を、創造的実践という観点から再検討し、現代社会において求められる応用力のある「伝達共有能力」のあり方を提案したいと考える。 本年度は、その目的達成の第一歩として、2011年2月に愛知大学にて「伝達・運用能力を再考する」ラウンド・テーブルを開催し、国内から主催者を含む14名の研究者を招聘して共同討議を行なった。(その討議は一般公開とし、会場には北海道を除く日本各地から約30名の参加者が集まった。)登壇者は、言語学、社会学、教育学、法律・医療、メディア研究、ビジネスといった多彩な背景を持つ研究者であり、各々の分野に固執しない多様な視点から議論を深めることができた。そしてこのラウンド・テーブルでの発表をもとに、研究代表者と分担者が編者となって、本研究計画の最終年度までに国内の出版社より研究論文集を出版すべく準備が進んでいる(すでに東京・ひつじ書房より出版の内諾を得ている)。当面のところ、平成23年9月を第一次の原稿締切とした。 また、データ収集の面では当初予定した分量を収集できなかったが、すでに収集済みであったデータの分析をもとに、研究代表者、分担者ともそれぞれの分野で学会発表、論文発表を行い成果公表に努めた(次ページ参照)。来年度以降は、さらに論文執筆・出版に比重を置く予定である。
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