平成24年度は、3年間の本研究企画を総括する年と位置付けた。そのための最重要課題は、2011年2月に愛知大学にて開催した「伝達能力を再考する:ラウンドテーブル」と、それに続く6月に、研究分担者池田(ただし最終年度は業務多忙のため分担者を辞退)の本務校である関西大学にて開催した第13回言語科学会シンポジウムでの発表にもとづく書籍の刊行である。したがって、平成24年度はその二つの出版企画のための査読・編集作業が中心となり、昨年度ほどの公的な学会発表やワークショップは行っていない。 前者については、そこでの発表論文に加え、関連の深いテーマに携わる研究者からの寄稿を仰ぎ、2013年3月に「コミュニケーション能力の諸相―変移・共創・身体化―」(ひつじ書房)という報告書を書籍の形で出版することができた。それぞれの論文について数回の査読と校正を繰り返し、論文およびコラムの執筆者は総勢は18名、計500ページ近い大冊となった。 後者での発表は、Elsevier社が刊行する応用/社会言語学の専門誌、Language & Communicationにおける特集号という形で結実し、片岡・池田の他に、アムステルダム大学人類学部教授Niko Besnier氏を編者に迎えて査読・編集作業を継続した。2013年3月時点で2~3回の査読と改訂作業を終え、計9本の論文およびIntroductionが、当初の予定通り2013年秋には正式に刊行されると確信している。 以上のように、研究企画当初に予定したデータ収集、データベース蓄積、分析の検討と口頭発表、さらに国内外における研究成果の刊行という目的を、際どいながらも最終年度までに達成できたと考えている。
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