研究概要 |
22年度は,先行研究及びすでに申請者がこれまでの記述してきた文法データを文法項目ごとの記述の枠組みへ整理する作業を行う。この枠組みは,申請者が,言語類型論研究で着目されている項目を網羅して作成したもので,Haspelmath, et.al.(2005) The World Atlas of Language Structuresの項目について,類型論研究者に情報を提供することが可能であるように編集してあるものである。とりわけ、申請者自身のデータであるチャウコンメン(CaoKongMeng)についてデータを整理し、その一部の成果を20th meeting of the Southeast Asian Linguistics Societyにおいて発表した。また、調査そのものの成果として、この言語の音韻論的スケッチを論文としてまとめた。 また、項目ごとに歴史的研究を開始する。これについては、3月に中央民族大学に赴き、海外共同研究者である、郡方貴氏と共同研究を行った。〓氏がミエン語のひとつであるビャウミン(BiauMin)のネイティブの研究者であり、この言語についてデータを提供していただくことができた。とりわけ、極性疑問文の形成について郡氏と研究セッションをもつことができた。それによると、ビャウミンでは極性疑問形成において動詞に声調交替が発生する。一方、チャウコンメンは動詞句の前に疑問標識が現れる。これは同系の言語ミャオ語のある方言にも現れる方式で、漢語の特徴でもないため、さらに歴史的な考察が必要であるものの、古い特徴である可能性がある。
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