研究概要 |
本年度はフランス語の他動性と直接目的属詞構文に焦点を絞って調査した。関連する複数動詞(croire, juger, laisser, proclamer, rendre, trouver)の基礎資料を整理することが出来た。例えば,jugerの構文を詳細に分析してみるとド予期しうるように2項と3項(直接目的属詞構文を含む)のものの頻度が高い。2項のものでは間接目的の「N-V-deN」(N:名詞,V:動詞,deN:前置詞deつきの間接目的)も多く,これとの関係でN-V-deN-commeAは注目すべきである(これは「間接目的属詞」の可能性を示唆しているが先行研究では指摘されていない)。3項構文では,直接目的属詞構文(N_0-V-N_1-[A_2/N_2](N_0:主辞名詞,N_1:第2項直接目的名詞,A_2:第3項属詞形容詞,N_2:第3項属詞名詞)とN_ -V-N_1-Vinf_2(Vinf_2:第3項不定詞)との共通性に注目すべきであって,意味解釈的なetre構文との関係(例えば,N_0-V-N_1-[A_2/N_2]とN_1-etre-[A_2/N_2]との関係)で直接目的属詞構文を一つにまとめるべきではない。動詞構文の分析は構文型と構成項の統辞機能に基づいて構文体系全体の中で行うべきである。 動詞構文分析に加えて,属詞構文との関係で問題になることが多い高頻度前置詞の一つenの用法分析にも時間を割いた。enN(前置詞enつきの名詞・名詞句)のNは文中で関係する名詞,名詞句と「抽象的」,「主観的」,「内的」で,「密接」なつながりを持ち,「一体性」を強める。このような性質とも関連して,enNのNには定冠詞形le, lesが先行することが極めて稀である(l',laは出てくる)。enのこのような働きは同様に頻度が高いdeやaには見られない。 上記の実例調査・分析にはフランスMarne-la-Vallee大学IGM・LADL研究所の資料,Le Monde紙(同研究所のUnitexプログラムによる),Frantext(フランスINLAF研究所)を主に利用した。
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