平成24年度は過去2年間の成果(第1年次はドゥンガン人その他の研究者の日本への招請,第2年次は当方からクルグズスタンのビシュケク等の訪問を通した資料の収集)を踏まえて日本におけるドゥンガン研究を本格化させる目的で,日本ドゥンガン研究会を組織し(顧問:ドゥンガン人1名,ロシア人1名,中国人(回族)1名,日本人4名),今までに例会を2回開き,思わぬ数の参加者(約15-20名)を得た.また『日本ドゥンガン研究会報』という電子雑誌を2号刊行し(第1号:2012年7月,52ページ;第2号:2013年2月,111ページ),ドゥンガンに関心を寄せる人々にメールでドゥンガン関係の情報を提供した. 特にドゥンガン人に関する情報の薄い日本で啓蒙用として『ドゥンガン論集』と題する冊子(280ページ)を作成したが,ここに第1年次に行った国際集会に寄稿したドゥンガン人研究者の提供した情報の日本語訳と日本人のドゥンガン人に関する社会言語学的研究の論文2編及び菅野裕臣,「ドゥンガン関係論著,略歴目録(1977年以降)」を収め,今後の一層の研究のための基礎とした.そして関心のある日本及び外国の研究者に配布,発送したが,この余り知られない民族に関して一定の反響が得られたと思う. また中央アジア関係の研究書3冊を購入した. クルグズスタンは中国の隣国であり,ドゥンガン人は中国の孔子学院を通じて中国の漢族や回族との連携をますます強めており,しばしばドゥンガン研究の名において政治的な傾向を帯びる傾向があるが,われわれはそれとは一定の距離を保ちながら,あくまでも学術研究に徹していく所存である.
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