1.海外実地調査およびコンサルタント招聘による資料収集 夏休みの期間を利用して、サハリン、沿海州・アムール地域での実地調査を行った。対象となった言語はナーナイ語、ウイルタ語であり、これまでの採集資料の分析確認とあらたな資料の採集を行った。ナーナイ語に関しては、異なる方言を示す村を回り、まだ記述されていない方言の記録・調査・分析を行った。具体的には、8月6日より8月19日まで、ロシア共和国サハリン北部のウイルタのトナカイ・キャンプにて、ウイルタ語を調査した。8月30日より9月13日まで、アチャン、ジュユン、ベルフニイィ・ネルゲンの各村をまわって、ナーナイ語の諸方言を行った。ウイルタ語の調査と、ベルフニィ・ネルゲンの調査は当研究者にとってはじめての試みであった。11月には1週間、ナーナイの協力者を招聘し、ナーナイ語の分析にあたった。資料の収集に際しては、民族学的に重要と思われる諸テーマについて、コンサルタントから多くの情報を得られるよう、留意した。そのような文化的事物の理解や記録のため、写真やビデオなどの映像データも多く収集した。録音はデジタルのICレコーダーで行った。 2.研究成果の発表、刊行と現地還元 6月の言語学会でナーナイ語の条件表現について発表した。12月には国立国語研究所で行われた研究会において、ナーナイ語の複文についての発表を行った。下記の論文、ならびにソロン語の語彙集を刊行した。この『ソロン語基礎語彙』は、豊富な例文からなり、英語及び日本語から引ける索引も付いている。郵送により発送し、語り手とと現地教育機関等に配布する予定である。国内の研究所機関ならびに記述言語学に携わる諸研究者にも発送の予定である。
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