研究課題/領域番号 |
22520431
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
早稲田 みか 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (30219448)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ハンガリー語 / 言語学 / 国際研究者交流 / ハンガリー |
研究概要 |
前年度に引き続き、ハンガリー語の動詞接頭辞のなかでもっとも文法化が進んでいる meg についての先行研究を収集し、meg の意味機能がどのように記述されているかを整理し、比較検討した。これまでの研究で確認したように、動詞接頭辞 meg の主要な意味機能は動作の完了を表す機能であるが、それ以外にもさまざまな用法がある。そのなかでも今年度は動詞接頭辞 meg が付加することによって生じるさまざまな意味的ニュアンスについて、データを収集して分析を行った。さらになぜそのような意味のちがいが生じるのかについて、統一的な説明ができないかを検討した。 具体的には、ハンガリー科学アカデミー言語学研究所の言語コーパス Magyar Nemzeti Szovegtarを利用して、ハンガリー語動詞接頭辞 meg が単なる完了ではなく、なんらかのニュアンスを表している事例のデータを収集して、分析した。その結果、動詞接頭辞 meg が付加されると、「なんとか~する」「やっと~する」といった意味を表す事例があることが確認された。 動詞接頭辞 meg の完了の用法は、これまでの研究で明らかになったように、meg が本来「うしろへ」の意味を表していたことから、「うしろへの移動」という空間的なイメージスキーマが、メタファーにより状態変化として捉えられ、さらに結果状態に視点が当たることにより、結果状態が前景化(終端焦点化)されて形成されたものと考えられる。これに対して、「なんとか~する」「やっと~する」といった意味は、始点から到達点への移動のイメージスキーマのなかの移動の過程の部分、あるいは、状態変化の過程の部分が意識される、すなわち、背景化されている要素が活性化されることによって生じると説明できることから、この用法も移動のイメージスキーマという枠組みで分析できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的はハンガリー語の動詞接頭辞の文法化のプロセスとメカニズムを明らかにすることにあるが、今年度は事象の完了を表す、もっとも文法化の進んでいる動詞接頭辞 meg の完了以外の意味機能について分析した結果、この意味機能も空間移動のイメージスキーマにより説明可能であるという結果が得られたことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きハンガリー語動詞接頭辞の多様な意味機能について、コーパスによる用例収集とその整理分析を行い、多義的なネットワーク構造の記述を行う。また、接頭辞の有無による意味のちがい、同じ動詞に異なる接頭辞がついたときの意味のちがいを明らかにし、なぜそのような差異が生じるのかを考察しながら、接頭辞の文法化および構文変化のメカニズムを、英語や日本語などの他言語との比較も視野にいれながら検討する。特に今年度の研究結果に基づき、背景化された要素の二次的活性化という現象に焦点をあてて研究を推進する。
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