ハンガリー語動詞接頭辞の多様な意味機能について、コーパスによる用例収集とその整理および分析を行い、動詞接頭辞の多義性をネットワーク構造として記述することを試み、動詞接頭辞の文法化と構文変化について考察した。具体的には、ハンガリー科学アカデミー言語学研究所の言語コーパス Magyar Nemzeti Szovegtar を利用して、ハンガリー語動詞接頭辞(本年度は特に「~の中へ」の意味を表す動詞接頭辞 be に焦点をあてた)の用法のデータを収集し、それらの意味機能を文法化の観点から分析し、文法化の程度と構文との関連性について検討した。 その結果、「~の中へ」という基本的な意味をもつ接頭辞 -be にも、中への移動による空間変化(へっこむ、閉じる、満たされる、おおう)から、空間変化の完了(完全に~する、最後まで~する)といった拡張された意味があり、文法化の現象が観察され、完了アスペクトを表わす文では対格構文が使われることが確認できた。 また、-be は歴史的にみると、使用頻度も低く、完了アスペクトをあらわす機能への文法化の程度も低いが、最近の現象として、とりわけ若者ことばにおいて、使用域が広がっていることが観察された。 新たな使用例において、-be は完了アスペクトや、微妙な二ユアンスを表したり、場合によっては、まったく異なる新しい意味を生成する事例もあり、今後の課題として派生辞としての動詞接頭辞の生産性について検討する必要があることがわかった。
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