研究概要 |
前年度に日本歴史言語学会第2回大会(千葉大学)で口頭発表した原稿に加筆修正を加え、同学会の機関誌である『歴史言語学』第2号(2013年11月30日発行)に公刊することができたのが、ひとつの成果として挙げられる。「ゲルマン語強変化動詞V類過去複数形に散発的に見られる語根末摩擦音の有声化について:*wes- 'be, stay, dwell' の事例を中心に」と題する論文であり、これは強変化動詞V類の過去形形態が、どのような形態変化を経て前ゲルマン祖語の時代からゲルマン祖語の時代にかけて生成発展したか、そのメカニズムの説明を試みた論文である。過去複数形に散発的にのみ見られるヴェルナーの法則適用例が、この動詞形態生成過程解明の重要なヒントを与えていることを主張し、特に、*wes- 'be, stay, dwell' の事例がこのことをよく表わしているということを、説明したものである。 「形態的混交説」と名付けた仮説に基づく説明で、強変化動詞VI類過去形形態生成のメカニズムの解明についての考察を進めることも行ったが、「髭を剃る」「パンを焼く」という意味の動詞の未完了形がそれらの過去形形態の基盤を与えた可能性があるという着想を得たという点に、目下の研究成果は留まっている。論文として発表できるまで、まだしばらくの経験的分析が必要となると思われる。次年度も継続して、この課題の考察を行いたい。
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