研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、古高ドイツ語ではなぜ本来は直説法であるはずの副文の定動詞が主文の影響によって接続法になるのかを解明することを課題とした。この課題を解決する為に、ラテン語・古高ドイツ語の対訳の作品『タツィアーン』から、ラテン語では副文の定動詞が直説法であるにも拘らず、古高ドイツ語では接続法で訳されている事例を66例取り上げ、これを考察の対象とした。本年度は主文の定動詞が接続法・命令法という事例に限定した。さらに、この成果を昨年度の成果、つまり主文が疑問文・否定文の28例と統合した。両者の統合により、副文に影響を及ぼすとされる主文のファクターをすべて網羅したこととなる。 2012年7月に、沖縄外国文学会第27回大会で「モダリテートから見た古高ドイツ語の副文における接続法 (2) ―その限界と可能性―」と題して口頭発表し、研究成果の一部を発表した。その後、8月にはドイツへ赴き、ケルン大学・レーゲンスブルク大学で文献収集を行った。レーゲンスブルク大学では、ティム-マーブレイ教授と面談し、専門的立場から助言を頂いた。これらの助言や資料、学会発表後の質疑応答を踏まえ、研究内容をさらに修正・深化させ、その成果をSouthern Review No.27へ投稿した。本年度の研究成果として以下の2点を挙げることができる。 1)94例中69例 (73,4%) においては、モダリテートという観点から見れば主文の影響ではなく、コンテクストの意味内容に合致した法として接続法が用いられている。 2)古高ドイツ語の副文において頻繁に現れる接続法を、モダリテートの観点からアプローチするこの手法の限界と可能性を、73,4%という具体的数値で以って示すことができた。 モダリテートの観点から解明できなかった25例(26,6%)については、今後の課題としたい。
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