研究概要 |
1年間計8回の北京調査により,次の四つの調査課題のそれぞれについて,調査と研究を進め、北京語・共通語とその口頭表現に関する新しい知見を得た。 (1)北京白話報刊(新聞と定期刊行物)の調査, (2)影戯影詞(影絵芝居とその脚本)の調査, (3)口供供詞(裁判の供述筆記とその引用)の調査, (4)電視劇本(テレビドラマの脚本)の調査, (5)上記(1)~(4)により収集された清代から民国期にかけての言語資料を収集する「清民語庫」の構築, (6)上記(5)により口頭対話を抽出する。太田辰夫1958『中国語歴史文法』の枠組みを用い,年代の確かな資料による漢語語彙語法の清代民国期の演変を記述する 1999から2012年に至る継続調査で抄写入手した言語資料(これに「清民語料」の名を与えた)のいくつかについて,初歩調査の結果を研究会学会で紹介報告した。そのなかには,これまで内外学界で紹介されたことのない新発見の資料も若干ある。 2011年4月から2012年3月にかけて,抄写調査した機関は次のとおりである。 中国第一歴史档案館(故宮西華門内) 中国国家図書館(白石橋路),同古籍〓(北海) 首都図書館(東三環外)歴史文献閲覧室(地下一層),中文期刊閲覧室(三層),北京地方文献閲覧室(五層) 北京市档案館(北京市蒲黄楡,南三環内)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
調査課題(1)北京白話報刊では,清代末期・民国初期に北京で発行された新聞や官庁定期刊行物数種に口頭言語を反映した文が広く見られることを報告した。これらの新聞・刊行物には,従来存在することの報告すらなかったものがいくつかあり,初歩調査とは言えその言語に関する報告は,この研究が初めてといってよい。調査課題(3)口供供詞では,清代の裁判で作成された公文書の束の中から,多種多様な事案の供述書(供述筆記原件とその公文書への引用)を多数見出すことができた。
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