研究代表者は1983年にパソコンを利用した言語地理学データ処理システムSEALを開発、マニュアルを出版、プログラムを公開するとともに、実際の調査資料への適用結果を論文発表して、「パソコンによる言語地理学」を提唱した。言語地理学におけるコンピュータ利用のメリットの一つである多数の言語地図を総合しての分析のうち、統計学を駆使した分析は、欧米の方言学で計量方言学(dialectometry)として近年盛んになっている。SEALは開発の初期段階から言語地図を総合し地図上に表示する機能を持ち、改訂にあたってその機能を維持発展させてきた。ICTの発展に応じたSEAL整備の継続とともに、複数の言語地図の比較・総合による言語データの分析の応用と発展、その公開方法の検討を目的として、研究を推進する。 平成24年度は、徳之島方言、新潟方言などの日本方言資料の調査・分析を行った。 ・徳之島方言、新潟方言について、SEALによる言語地図作成、MandaraやArcViewなどGISを使った言語地図作成を行い、電子化して発表・公開用の地図を累積した。 ・徳之島や新潟において新たな言語地理学調査を行った。徳之島では、30年前の東大による全島調査や天城町浅間での詳細調査と比較できるデータを得るため、天城町と伊仙町の2地点で語彙・文法の調査を行った。 ・24年度に行った徳之島の30-50歳代における方言調査結果で、当方言における共通語化と平準化の様相がわかり、NWAV-AP2で共同発表した。異なる言語地図の総合と比較に関わる方法論に関わって、日本行動計量学会で発表した。この3年来行っている全国方言調査の一環である新潟県調査から可能方言について地図化を行い、過去の言語地図と比較して、First International Conference in Asian Gelinguisticsにおいて発表した。
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