研究概要 |
1)本研究の理論的背景となる社会語用論についての考察をも行い、下記の論文の前段に述べた。 2)今年度は教化文書の中でも特にカテキズム、カトリックとプロテスタントの演劇テクストを分析の対象とした。 3)カテキズムは少青年の宗教教育の教科書であり、学校における演劇も学生、生徒の教育を目的としたものであるから、教化は一般民衆だけでなく、後進の若者をも重要な対象としていたことが明らかとなった。 4)中世以来の伝統的演劇素材である『エブリマン』や新約聖書中のイエスの寓話である『放蕩息子の帰還』などのテーマはカトリックの作者もプロテスタントの作者も演劇素材として利用したが、そこには自ずと宗教的立場の違いが表れ、テクストの社会語用論的分析の材料として適切であることが明らかになった。 5)夏期休暇中にベルリン自由大学図書館でイエズス会演劇に関する研究文献調査を行った。 6)F.Simmlerベルリン自由大学教授とイエズス会演劇テクストに関する意見交換を行った。 7)学年末休暇中にボン大学図書館において16~17世紀の学校演劇に関する研究文献調査を行った。 8)W.Besch,W.Hoffmannボン大学教授らと学校演劇テクストに関する意見交換を行った。 9)昨年度に引き続き、研究補助者を使って武蔵大学所蔵のG.Freytag、H.-J.KohlerによるFlugblatter,Flugschriften(宣伝ビラ、冊子)のコレクションをスキャナーで読み取り、パソコンで扱えるようにして、これまで作成してきたデータベースをさらに充実させた。 10)以上の研究成果をもとに、近世ドイツ教化文書の文書類型に関する全般的考察を行い、論文にまとめて武蔵大学人文学会雑誌43号に発表した。
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