宗教改革運動の中で民衆教化に用いられたさまざまな種類のドイツ語文書にはカトリックとプロテスタントのそれぞれのイデオロギーが色濃く反映されており、それらは言語的ストラテジーの違いとなって表れている。 カトリックはエリートを教化の対象とし、さまざまな修辞的手段を駆使し、統語論的にも複雑で、ときにはラテン語を引用するなど、高踏的な文章を書く傾向が強いのに対し、プロテスタントは庶民に向かって、統語論的にも単純で、耳で聴いてもわかりやすく、また、ときには粗野な表現を使い、日常的な格言をまじえるなど、簡潔で力強い文章のものが多いという対照が見られた。
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